第１のギアス。それはデュペルゲノンによって、記憶を封印するものだった。
ある瞬間から以後、記憶を辿ろうとすると身体を縦に剥き裂いて、表裏を逆に
する。猛烈な痛みとともに死を意味するギアス（制約）。
第２のギアスは、辿った記憶をしゃべろうとすると、舌と指が麻痺し、一言
ごとにHPを半減させるものだった。即死はしない分、レベルは低いが、記憶の
封印には違いない。皆はギャロウェイを問い質（ただ）すことをやめた。
時が経ち、ギャロウェイも仲間内では冗談を言えるまでになった。
Shinomyuの成長を喜び、まつじのジョークに逆襲し、あや７やてゅもんのために
働けるまでになった。
（これでいいのではないか。誰だって語りたくない過去を持っている）竹流は
そう思うことにした。
ファルクだけが違った。デュペルゲノン退治以後、ギャロウェイの、ファル
クを見る眼が変わったように思えたからだ。
ファルクはMTに、フェアリーのりぇんに、じょあんに、噂話を集めてくれる
よう、頼んだ。
その日はやってきた。エルフの森の外れで、今までとは違うタイプのダーク
エルフ（DE)を見た、という噂が流れてきた。普段、ギラン周辺に出没するDEは
濁った眼をし、言葉を発しない。その『新種のDE』は発音は不明瞭ながら、
エルフ語を話した、と言うのだ。
それこそ伝説の『異界に置き去りにされたDE』に他ならない。『異界の門』が
開いたのだ。奇しくも反王ケンラウヘルがアデン城を失ったばかり。
この２つに関連はないのだろうか？
ギャロウェイはアデン城落城の場に行っていた。その場でチラリと見た女性
ウィザードに、デュペルゲノンの面影を感じた気がした。そのことは誰にも
黙っていた。
フェアリーのりぇんが室町幕府のアジトに現れたのは、月のない晩だった。
りぇんはできるだけ羽ばたかないように、風に乗って窓から滑り込んできた。
それは、自分の羽音が『不吉なもの』を呼び込んでしまいそうだったから
かもしれない。単に横着しただけかも・・。フェアリーはエルフ以上に気まぐれ
なのだから（笑）。
「ギャロウェイ、MTに来て」
りぇんはそれだけしか語らない。ファルクも、Layraeさえも同行を認めない口調
だった。
ギャロウェイは自分の装備を整え、秘蔵のワッフルとミスリルの矢を用意した。
「これ、持って行け」
ファルクがクリアポーションと、じょあんから贈られた【奇跡のリングと
アミュレット】を貸し与えた。ギャロウェイは無言で受け取り、身に付けると、
MTに飛んだ。
