数日後、ギャロウェイは竹流さん、Layraeさんとカオス神殿の近くで狩りを
した。ふと、竹流さんが聞く。
「ギャロ君、レベルいくつになった？」
「・・１９」ギャロウェイの人間嫌いは、薄まってはいても完全ではない。
「ふむ・・。Layrae、ギャロ君の成人の儀式、手伝ってあげてくれない？」
「どうしてよ」
「だって、彼・・」
一瞬漂う不協和音。エルフの成人儀式は、森を彷徨う『影』を追い払うことだ。
『影』の残した切れ端をMTに渡すことで、『成人』と認められる。
「わからないなりに、一人でやるさ」
ギャロウェイの言葉に、Layraeさんが微笑む。
ギャロウェイが森を行く。装備はファルクから借りた。なぜだかエルフメイドを
好むファルクの装備と愛剣を持って、生命の樹を巡り歩く。普通、成人儀式には
愛用の弓を使うのだが、この時MTはギャロウェイに剣を使うことを要求した。
一本の生命の樹の下に不審な『影』が揺れている。ギャロウェイが近寄ると、
『影』は驚いたように叫ぶ。
「お前、生きていたのか？俺が誰だかわかるのか？」
ギャロウェイの身体を、一瞬、あの激痛が走る。声を無視して無言で切りかかる。
数度切りかかると、手ごたえはないが、『影』が逃げ出した。
『影』は逃げながら話しかけるが、一言でも答えれば失神してしまいそうで、
無言で剣を振るうギャロウェイ。
たまらず『影』が【異界の門】を開いて逃げ込んだ。閉じる寸前、ギャロウェイも
飛び込んだ。そこは乱雑な実験室だった。幾対ものエルフの死体や臓器が梁（はり
）に棚に並べられている。
中に入ると『影』は実体化し、一人の魔術師になった。さらに２人の魔術師がいる。
「デュペルゲノン様、そのエルフは、まさか・・」
実体化したデュペルゲノンは攻撃魔法を次々に繰り出す。ボロボロに傷つけられ
ながらも、ギャロウェイの剣がデュペルゲノンを貫いた。
「ダークマール、我が研究と女、そして我が娘を連れて行け！」
断末魔の悲鳴と共に、デュペルゲノンが指示を出す。
ダークマールと呼ばれた魔術師が、別の【門】を開き、生きた人形のような女性
エルフを引っ張って飛び込んでいく。女魔術師が赤ん坊を抱いて続く。
デュペルゲノンの身体が塵になると同時に、ギャロウェイの身体からなにかが
弾けた。ギャロウェイにはもう、ダークマールを追うだけのHPは残っていない。
【異界の門】が閉じる。ギャロウェイがMTへ飛んだ瞬間、デュペルゲノンの研究室は
消滅した・・。
MTから『成人の証』として『体力のヘルメット』を受け取り、ギャロウェイはWBへ
戻った。
「ギャロさん、合格したのね、よかった(^^」Layraeが声をかける。
「なにか様子が変わったね」竹流さんとホイチさんが眼を細める。
「デュペルゲ・・」
そこまで言ったとき、ギャロウェイは倒れた。室町幕府の皆が駆け寄る。
「どうして？いきなりHPがゼロよ？」
「・・ギアスの色が変わっている。ギャロは２重にギアスを掛けられていたよう
だよ」ホイチさんが可愛そうに、とつぶやく・・。
