約束の日、TIに竹流さんと出迎えにいくと、ギャロウェイは一人の若い
女性ナイトを連れていた。若い、というより少女と呼ぶほうが正しい、眼の
大きな剣士。
「よく来たね、ギャロウェイ・・その人は？」
「時間までその辺で狩りをしていたら、オークの群れに囲まれて。自分の犬を
犠牲にしてまで助けてくれたんです。」
女性ナイトはShinomyu、と名乗った。竹流さんの発案でお近づきの印にクラン
ハント（クラハン）をすることにした。場所はTIC。

「私、Lv12だから・・」
「TIC1Fなら、なんとかなるでしょ（＾＾」

TICはスケルトン、岩ゴーレム、オーク、ゾンビ、グールの生息する狩場。
難易度は高くない。
道を知っている竹流さんを先頭に、まっちゃんとShinomyuが2列目に、Layrae
さんとギャロウェイが後衛の布陣で進んでいく。

　と、脇道から岩ゴーレムが襲い掛かってきた。Shinomyuが剣を振り下ろす。
キーーン！火花が散る。Layraeさんの弓で撃退する。
「Shinomyu、この剣、使って」
「ギャロウェイさん、これは？」
「ファルクに預かったダマスカスソード（ダマ剣）。岩ゴレを叩いても刃こぼれ
しないから」
「・・お借りします」

　狩りの後、宿で急速と分配。そこでShinomyuが話し始めた。
「犬を強くする方法って、どうすればいいでしょう」
「さっきの岩ゴレはターゲットを変えにくいから、弓か魔法、ダマ剣か斧で
ファーストアタック（FA）を取って引き回し。そして犬で処理、が一般的
だね」
「それで早く、強くできますか？」
「・・どうして急ぐの？」
「私、歌う島（SI)でクロコダイルに剣を壊されたんです。その仕返しをしたい。
でも、Lv12だからあんまり時間がないんです」

　途中合流のファルクも含めて、みなが考え込む。竹流さんが、言う。
「SIのクロコは弱めてあるから、強くなってから本物のクロコで敵（かたき）を
討ったら？」
　賛同意見が多い。Shinomyuの大きな眼に失望と涙が浮かぶのを、ファルクは
見逃さなかった。
「竹流<さんの意見は正当だと思う。けど、他の装備と違って剣はナイトの命
なんだ。傷つけられて放ってはおけないよ。その意気込みが今のShinomyuを
支えていることを、分かってあげて」
「・・やれるだけやってみるか。できるだけ小さなダメージでFAを取れば・・
それでも間に合うかどうかは保証できないよ」
「・・はい」
　時間が許す限り、岩ゴレで犬を訓練する練習をしてその日は別れた。
3日後、Shinomyuはみごとに敵を討って、SIを卒業した。