「ギャロ、昨日はどこに行っていたの？心配したよ」
彼に駆け寄った姫さまは、ホッとした様子で彼に話しかけた後、我々一行に
気がついた。
「シファネ皇女です。うちのギルド員がご迷惑をおかけしました？」
「竹流皇子です。実は、今朝方・・」

　りぇんはエルフ語しか話せない。室町幕府にはLayraeさんがいるから
わずかにエルフ語を聞き取れる者もいる。私ももちろんLayraeさんに習った
のだが、寝ていたはずの竹流さんが聞いていたとは（笑）。

　昨夜の様子を伝えると、シファネ姫が話し始めた。
「私も詳しくは知らないんです。数日前、隠された渓谷でギャロウェイに
出会ったの」

　ナイトの修練所である隠された渓谷を散策していたシファネ姫は、村の
外れに倒れていた彼を見つけた、と言う。

「あなた、誰？」
「・・私は誰だ？」
「・・あなたはエルフよ。なんでこんなところにいるの？」
シファネ姫の問いには答えず、男エルフはさらに尋ねた。
「あなたもエルフ、か？」
「私は皇女、人間よ。名前はシファネ」
「僕は・・ぐぉぉぉ〜〜〜！！」

気絶した男に呆然としながらも、村の治療師に運んだが、「彼にしてあげられる
ことはない」と言われたそうだ。

「どうも、ね。ギャロウェイは記憶を失っていて、思い出そうとすると全身に
剥き返られそうな激痛が走るらしいのよ。誰かに話しかけられるたびに気絶して
その都度、荷物を奪われたらしくて、彼、人間が嫌いみたいｗ」
「では、『ギャロウェイ』って名前は？」
「名無しじゃ困るでしょ？あたしがつけてあげたの。『希望のかけら』って
意味(^-^)」
「ふむ・・。フェアリーがうちのナイトのところへ連れてきた以上、うちで
預かってほうがいいのかな？」
「うちも今、クラン員がいないんだけど・・」

　シファネ姫と竹流さんが話し合って、次の満月の日にギャロウェイを室町
幕府で引き取ることになった。

「でも覚えておいて。彼、エルフの森さえ知らないのよ」