キィルリィ〜ン♪キィルリィ〜ン♪
幽（かす）かな澄んだ音を聞いた気がした。夜の帳は上がろうと
しているが、夜明けまでにはまだ、時間がある。
そのころ室町幕府では、こんな森の中で夜を過ごすことも多かった。一日中
モンスターを追い（追われ？ｗ）、ウッドベック（WB）に戻らない日は、水場の
近くの森で休憩する。火を起こし、簡素な食事の後は自由時間。矢羽や剣の
手入れをしながら冗談を言い合う者、詠唱すべき魔法書を復習する者・・。
夜も更けるころ、当直を立てて岩や倒木を枕に眠る。
WBやハイネの仮アジトも嫌いではないし、宿に部屋を取って寝るのも悪くは
ないが、私は風と森の香りに包まれて眠るのが好きだった。
第3当直は暇だ。第1当直は気の緩みが、第2当直はアンデッドがPTを襲うが、
こんな時間に寄ってくる敵は少ない。相方の竹流皇子も岩にもたれて居眠りを
している。
（夢を見たかな？失敗失敗ｗ・・）頭から睡眠への欲求を追い出しながら
愛剣を引き寄せた。お世辞にも使いこなしているとは言い切れないが、今や私の
右腕の延長に思えるカタナ。
「ファルク、起きてる？」
身体を預けていた老木から跳ね起きる。眼の前に小さな輝きがヒラヒラ踊る。
「・・りぇん？」
「馬鹿なこと聞かないで。あたし以外に誰が人間のあんたを起こしに来るのよ」
この口の悪さは、フェアリーのりぇんに違いない。以前、エルフの森で私への
警告と攻撃を躊躇（ためら）って、結果的に『森とエルフの母（MT：マザー
ツリー』へ案内してくれたフェアリー。
「りぇん、森になにかあったか？」
「あんたにお客さんを連れてきたのよ。お荷物を、かもｗｗｗ」
少し離れた木の影から、人影が現れた。シルエットは明らかにエルフなのだが、
その服装は人間のもの。
「・・・君は？」
「・・・ギャロウェイ・・」男が答える。
「ギャロウェイ、君の用とは？」
「だめよ、ファルク！」
「ぐぉぉぉ〜〜〜！！」
驚いた。繊細なエルフの喉からこんな悲鳴が出るものなのか？
一瞬にしてPTが戦闘体制に入る。百地丹波さんとまっちゃんが抜刀して左右に
散る。Layraeさんが弓に矢を番（つが）える。ホイチさんが『ライト』の魔法で
周囲の闇を払う。ガノさんが攻撃魔法の詠唱を始める。
「敵襲じゃないよ、そこの彼の悲鳴だ」
岩にもたれ掛かったまま、竹流さんがのんびりした声をかける。
りぇんは既にどこかへ行ってしまった。残された男は両腕で自分の胸を抱き
しめ、のたうち回っている。
ホイチさんとLayraeさんが彼を調べる。
「怪我じゃないみたい」
「・・これはギアス（強制魔法）を掛けられているよ」
「ホイチさん、なんとかできる？」
「ギアスはキャンセレーションじゃだめだ。クエストを解くか、術者を倒さ
ないと」
もだえ苦しむ彼をようやく寝かせつけて、やっとPTの緊張が解（ほぐ）れて
いく。
「彼に説明してもらうのは、明日の朝にしましょ〜」竹流さんはどこまでも
落ち着いている。
夜が明けて、簡素な食事の後、PT一同はギャロウェイに連れられて語る島
（TI)に向かった。TIの宿屋の前に、一人の姫さまが待っていた。
